健康診断は事業主の義務?健康診断の基本を徹底解説!~年1回だけじゃない!人を雇った時にも健康診断が必要~

人 人事・労務
Businesswoman with office IP telephone

事業主の方が人を雇うと色々な義務が発生します。健康診断もそのひとつです。

毎年1回受ける健康診断は知っている、という方もいるかも知れませんが、人を雇った時にも健康診断は必要です。

筆者も人事の仕事をするまで知らなくて、健康診断ってこんなに細かな決まりがあるのかと思いました。

記事では事象主の義務とされる健康診断について、種類や検査する項目、費用、会社のやることなどを詳しく解説します。

健康診断は受けないとダメ

会社は健康診断を労働者に受けさせなければなりません。労働者は、会社が行う健康診断を受けなければなりません。労働安全衛生法という法律により決められている義務です。

健康診断を行うことで、労働者の健康状態を把握し、作業により引き起こされる事故やケガ・病気を防ぎ、原因を早期発見し被害の拡大を防止することが目的です。

専門用語で就労判定といいますが、会社は健康状態により、社員にその仕事をさせてよういかを医師に判定してもらいます。

現在の仕事がムリであれば、可能な仕事に配置転換するなどの対応をとります。そのために労働者の健康状態を知りたいのです。事前対応することで、労災事故の防止にもつながります。

健康診断の対象者

健康診断は正社員だけでなく、パートやアルバイトなどのフルタイムでない労働者も対象です。ただし、対象者には次のような雇用期間や労働時間の要件があります。

【使用期間】
・ 一般業務従事者は1年以上使用される予定の者

・ 特定業務従事者は6カ月以上使用される予定の者

【労働時間数】
(1) 同種の業務に従事する労働者の一週間の所定労働時間数の3/4以上

(2) 同種の業務に従事する労働者の一週間の所定労働時間数の3/4未満である労働者であっても、おおむね1/2以上であれば実施が望ましい

該当した場合は健康診断を受けなければなりません。任意ではないので注意しましょう。

健康診断の種類

健康診断には種類があります。年1回受ければよいと思っている方もいるでしょうが、実はルールがあり、半年に1回や入社した時に受けなければいかないこともあります。

表のなかに「雇入れ」という聞きなれない言葉があります。「入社」だと思ってくださいね。

健診の種類
出典:厚生労働省|労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう~労働者の健康確保のために~

表の※1の対象業務は深夜業や放射線を扱う仕事などです。深夜業とは病院や工場、宿泊施設の夜勤などです。

詳しくは、こちらの厚生労働省のリーフレットで確認できます。

健康診断の項目

健康診断は種類により検査項目が決まっています。多くの会社が実施する年1回の「定期健康診断」と、人を雇った時に行う「雇入れ時」の健康診断の項目は次の内容です。

健康診断専門の検診センターや都道府県の医師会などは健康診断コースがあるので問題ないのですが、慣れていない病院だと検診の検査項目を聞かれることがあります。

知っておくとよいでしょう。

定期健康診断 (安衛則第44条1 既往歴及び業務歴の調査

(1) 既往歴及び業務歴の調査

(2) 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

(3) 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

(4) 胸部エックス線検査及び喀痰検査

(5) 血圧の測定

(6) 貧血検査(血色素量及び赤血球数)

(7) 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)

(8) 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)

(9)  血糖検査

(10) 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)

雇入れ時の健康診断 (安衛則第43条) 定期健康診断 (安衛則第44条)

(1) 既往歴及び業務歴の調査

(2) 自覚症状及び他覚症状の有無の検査

(3) 身長、体重、腹囲、視力及び聴力の検査

(4) 胸部エックス線検査

(5) 血圧の測定

(6) 貧血検査(血色素量及び赤血球数)

(7) 肝機能検査(GOT、GPT、γ―GTP)

(8) 血中脂質検査(LDLコレステロール,HDLコレステロール、血清トリグリセライド)

(9) 血糖検査

(10) 尿検査(尿中の糖及び蛋白の有無の検査)

(11) 心電図検査

検診内容を見比べると違うことにお気付きでしょうか。

健康保険が「協会けんぽ」であれば、35歳以上は生活習慣病の検診も受けていると思いますので、胃の検査などが追加されます。

健康診断の費用は会社負担!料金はいくら?

法律により実施する健康診断の費用は会社が負担します。追加の検査については会社が負担する義務はなく、社員負担としても問題ありません。

健康診断の料金は病院によりちがいます。病院によってコースが決まっており、そのコースで受ける検査項目がちがうためです。

ただし、健康保険が協会けんぽの場合は、35歳以上について健康診断料の補助を受けられます。検査項目は決められており「生活習慣病予防検診」といいます。

2023年4月以降は会社が負担する料金もさがりますよ。

健診料金
出典:協会けんぽ|生活習慣病予防健診の自己負担額(会社負担)

生活習慣病検診は協会けんぽの指定病院でしか健診を受けられません。料金の補助も指定病院で受けた時のみです。

指定病院は、こちらの協会けんぽサイトの「健診実施機関等一覧」で確認できますよ。

健康診断後に会社がすること

健康診断を行った後にも会社がやることはあります。というか、やるべきことが法律で決められています。違反しなしように注意しましょう。

(1) 健康診断の結果の記録
健康診断の結果は、健康診断個人票を作成し、それぞれの健康診断によって定められた期間、保存しておかなくてはなりません。

(2) 健康診断の結果についての医師等からの意見聴取
健康診断の結果に基づき、健康診断の項目に異常の所見のある労働者について、労働者の健康を保持するために必要な措置について、医師(歯科医師による健康診断については歯科医師)の意見を聞かなければなりません。

(3) 健康診断実施後の措置
上記2による医師又は歯科医師の意見を勘案し必要があると認めるときは、作業の転換、労働時間の短縮等の適切な措置を講じなければなりません。

(4) 健康診断の結果の労働者への通知
健康診断結果は、労働者に通知しなければなりません。

(5) 健康診断の結果に基づく保健指導
健康診断の結果、特に健康の保持に努める必要がある労働者に対し、医師や保健師による保健指導を行うよう努めなければなりません。

(6) 健康診断の結果の所轄労働基準監督署長への報告
健康診断(定期のものに限る。)の結果は、遅滞なく、所轄労働基準監督署長に提出しなければなりません。

上の項目の(1)の健康診断の結果の記録に必要な健康診断結果は、個人情報保護の点から、社員の同意書がないと会社控えの結果表をくれない病院もあります。

また、(6)の労働基準監督署への報告はモレないように注意しましょう。病院によっては、報告書類を作成して会社控えの健康診断結果と一緒にくれることもあります。

まとめ

人を雇ったら健康診断が会社の義務となることを知っておきましょう。健康診断には細かな決まりがありますので注意しましょう。

マネーフォワード は会計ソフトだけでなく、請求書・経費・給与・契約などバックオフィスに必要なサービスを基本料金内でまとめて利用できます。
バックオフィスの効率化なら「マネーフォワード クラウド」がおすすめですよ!
キャンペーンの詳細を見る