会社のさまざまな取引で保証金を支払います。しかし、差し入れた保証金のすべてが返還されるわけではありません。
保証金は契約内容により償却する場合もあります。この記事では保証金を償却する契約や仕訳方法について解説します。
保証金とは
保証金とは債務者と債権者の間で授受される金銭で、将来発生する可能性のある債務の担保です。債務者側は「差入保証金」、債権者側は「預り保証金」の勘定で処理します。
通常「保証金」といえば「差入保証金」を指し、一時的に預けているだけで返金を前提としていますので出金した時点は消費税の対象外として処理します。しかし、契約内容によっては返還されないものもあります。
保証金を償却する場合はどんなとき?
保証金を差し入れる場合に契約のないようにより全額が返還されない場合は「長期前払費用」として契約期間で償却するか一括費用処理をします。それぞれに該当する要件と処理方法について確認しましょう。
長期前払費用とは?
長期前払費用とは1年を超える期間の前払費用です。「資産」と認識し、投資その他の資産でと認識します。保証金は契約期間で毎月償却していきます。
例えば3年の賃貸契約の事務所家賃500,000万、保証金6カ月、償却30%の場合
保証金:家賃500,000×6カ月=3,000,000
償却30%なので長期前払費用:3,000,000×30%×消費税10%=990,000
3年で償却すると1年では:990,000÷3年=330,000
月々の償却額は:330,000÷12カ月=27,500
このような計算になり、毎月27,500円を償却します。仮計算では事務所家賃で計算しましたが、長期前払費用は家賃の課税区分にあわせます。
もし、長期前払費用の対象が社宅であれば、居住用の不動産賃貸は非課税なので長期前払費用も非課税となります。
【仮計算の保証金を差し入れた場合の仕訳例】
借方 | 貸方 | ||
差入保証金 | 2,010,000 | 預金 | 3,000,000 |
長期前払費用 | 990,000 |
長期前払費用は決算時に当期分を一括償却する方法もありますが、月次決算や4半期決算の数字を正しく把握するためには、少々手間でも毎月行うのがよいかと思います。
償却の仕訳は会社の会計方針によりますがパターンとしては次のようなものがあります。
【長期前払費用を償却した場合の仕訳例】
借方 | 貸方 | ||
長期前払費用償却 | 27,500 | 長期前払費用 | 27,500 |
【長期前払費用を償却して地代として計上した場合の仕訳例】
借方 | | 貸方 | |
地代家賃 | 25,000 | 長期前払費用 | 27,500 |
仮払消費税 | 2,500 | | |
どのような契約内容の場合に長期前払費用を計上するのかご説明しましょう。
賃貸契約書に保証金の償却についての記載がある
賃貸契約書に保証金の償却の定めがある場合は、基本的に保証金の支払時に長期前払費用として計上します。ただし「3年未満は30%償却、3年以上はなし」などの条件がついている場合は別です。定められた期限内に解約する予定がないのであれば全額「差入保証金」として処理し、長期前払費用は計上しませんので注意してください。
賃貸契約書に敷引きの条項がある
賃貸契約書に敷引きの条項がある場合は通常は期限などの条件が付されていません。そのため、敷引き額が20万を超えていれば支払時に差入保証金と長期前払費用にわけて計上します。
【社宅の賃貸契約で敷引きの定めがあり敷引き額が20万を超える場合の仕訳例】
借方 | | 貸方 | |
差入保証金 | 250,000 | 預金 | 500,000 |
長期前払費用 | 250,000 | | |
契約書に加盟金を返金しないと明記されている
契約書に加盟金を返金しないと明記されている場合は償却の対象となります。一般的に新規事業を始めるにあたり差し入れるフランチャイズの加盟金は返金されません。返金されないとわかっているので加盟金は償却対象となります。事業は継続しますので賃貸契約のように対象期間がありませんが、通常は5年で償却します。
一括費用処理できる場合もある?
返金されない保証金は長期前払費用となり税務上の繰延資産として扱い、原則は契約期間もしくは5年で償却します。ただし、20万未満は一括費用処理することが認められています。
【社宅の賃貸契約で敷引きの定めがあり敷引き額が20万以下の場合の仕訳例】
借方 | | 貸方 | |
差入保証金 | 150,000 | 預金 | 300,000 |
支払手数料(敷引き) | 150,000 | | |
同じように礼金や更新料も20万未満であれば契約時に一括で費用処理しますので覚えておきましょう。20万以上であれば、長期前払費用です。
まとめ
保証金の処理は契約内容による個別判断になります。返還されない場合でも、長期前払費用として分割償却するパターンや一括費用処理するパターンがあり迷うこともあるでしょう。税計算にも影響しますので注意して処理しましょう。
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