注文書とは契約の申込み書類です。注文書と請書はセットで発行されるのが一般的です。契約書と違い、同じものが2通うあるわけではないので処理に戸惑うこともあります。
契約書のように多くの条項が必要ない取引の場合やすでに基本契約を結んでいる場合は注文書を交付して契約の合意をかわすこともあります。
筆者も社内で注文書の発行や請書(「うけしょ」とよみます)の処理について聞かれることがあり、説明することも多いです。
この記事では注文書と請書の書き方について詳しく解説します
注文書とは
注文書とは民法の契約の申込み書類です。交付する=契約の申込みとなります。
契約は「この仕事お願いします「わかりました。引きうけます」というような口約束でも契約は成立します。
あえて注文書を発行することで、契約金額や納期などを明確にすることで、契約内容の認識のちがいによるトラブルを防ぐ効果があります。
注文書と請書はセット
通常は注文書と請書はセットで注文者が発行します。
取引先に対して注文証で注文する意思を示し、取引先は請書で注文書の内容で仕事をうける意思を伝えるのです。
まれに、注文書のみ発行されることもあるようです。筆者も経験があります。請書の同封忘れかと思い確認しましたが、請書はいつも発行していないとのことでした。
仕事をうける意思表示は口頭やメールでいいとのことでしたが、金額が大きく、以前からお取引のある相手ではなかったので、社内で協議して自社の様式で請書を送ったことがあります。
注文書の書き方
注文書には必須の記載事項がありません。民法の契約については記載内容を細かくさだめていないのです。
しかし、商習慣で一般的に記載する項目はある程度きまっています。
多くの注文書をみてきましたが、ほとんどの注文書には①から⑪の項目が記載されています。
① 注文する取引先名
② 発行年月日
③ 注文書No.
④ 注文者
⑤ 件名
⑥ 注文内容(品名や型番、個数など)
⑦ 注文金額
⑧ 消費税
⑨ 納期
⑩ 支払条件(現金100%とか手形100%など)
⑪ 納品場所
これらを記載して、発注者の社名の部分に捺印もあれているのが一般的でしょう。
建設工事の注文書には注意!
注文書には記載事項の定めがないとご説明しましたが、例外的に建設工事は記載内容が決まっています。民法ではなく下請法で定められているのです。
建設工事の注文書に記載しなければならない項目は
① 工事内容
② 請負代金の額
③ 工事着手の時期及び工事完成の時期
④ 工事を施工しない日又は時間帯の定めをするときは、その内容
⑤ 請負代金の全部又は一部の前金払又は出来形部分に対する支払の定めをするときは、その支払の時期及び方法
⑥ 当事者の一方から設計変更又は工事着手の延期若しくは工事の全部若しくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更又は損害の負担及びそれらの額の算定方法に関する定め
⑦ 天災その他不可抗力による工期の変更又は損害の負担及びその額の算定方法に関する定め
⑧ 価格等(物価統制令(昭和21年勅令第118号)第2条に規定する価格等をいう。)の変動若しくは変更に基づく請負代金の額又は工事内容の変更
⑨ 工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め
⑩ 注文者が工事に使用する資材を提供し、又は建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め
⑪ 注文者が工事の全部又は一部の完成を確認するための検査の時期及び方法並びに引渡しの時期
⑫ 工事完成後における請負代金の支払の時期及び方法
⑬ 工事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任又は当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容
⑭ 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金 その他の損害金
⑮ 契約に関する紛争の解決方法
工事という特殊性から出来高払いなの支払いや賠償に関する項目が多く入っています。
建設業の方だけでなく、社屋を建設する場合など他の業種の方にも関係があります。建設工事の注文書は注意、と覚えておくとよいと思います。
請書の書き方
請書は捺印して印紙を貼って、注文書を交付したお取引先に送ります。
受け取った時のポイントは注文書の内容と同じ内容になっているかのチェックと、記載内容で仕事をうけられるかです。
請書を返送すると契約は成立しますから、記載内容の仕事ができなければ契約不履行となりますので注意しましょう。
請書に押す印鑑
請書にうける会社の社名や住所のゴム印と会社の印鑑を捺印してかえします。
会社の印は通称:角印とよばれる社名の印鑑だけでもよいですがい、丸印とよばれる役職印でも問題ありません。
民間の取引なら角印だけでも十分です。社名のゴム印だけでも契約は成立しますが、商習慣として朱色の会社の印を捺印します。
ただし、公官庁との契約では契約者と契約印を届出してありますので、届出した契約者(社長名か支店長名かなど)の名前で届出した印鑑で捺印します。
大手企業のなかにも事前に印鑑の届出を求める会社もありますので、その際は従いましょう。
印紙の金額は
請書には印紙を貼ります。注文する側の注文書には印紙は不要ですが、仕事をうける側の請書には必要なので注意しましょう。
貼る印紙の金額は請負契約の印紙税額です。ただし、納品の請書には印紙は不要です。
印紙の金額や処理方法についてはこちらの「収入印紙ってなに?貼るべき書類と印紙の消印(割印)の方法を見本の図を使い徹底解説!」記事で詳しく解説しています。
注文書と発注書はどうちがう?
注文書と同じような言葉に「発注書」があります。2つのちがいは明確にはありません。
どちらも注文する際に発行されます。特に業種によって使い分けられている印象もありません。
そもそも発注とは注文することの意味です。会社のシステム的に、どちらの言葉を使っているか程度のちがいです。
取引先からは発注書と請書が届いたら注文書と同じように処理すれば大丈夫ですよ。もちろん請書にも印紙は必要です。
まとめ
取引先から注文書が届いたら請書を返しましょう。最近はメールでの契約も多いと思いますが、金額が大きくなれば支払条件などを明確にできる注文書があれば安心ですよ。
郵送の手間や印紙のことを考えると・・・イマイチ・・・という方にはクラウドサインもあります。電子契約は郵送の手間や印紙が不要などメリットも多くおすすめですよ!