先日、社内に「環境型セクハラ」の認識がないことが発覚して頭を悩ます人事担当です。
数年前に東京地裁の判例で壁ドンがセクハラと認定されたことがあり、人事畑の一部の間では話題でした。その際にも環境型セクハラにも該当するのか、と思ったことがあります。
この記事は、壁ドンからオープンスペースでの行為が環境型セクハラに該当する可能性について冷めた人事担当の目でお話しします。
セクハラの定義
セクハラという言葉が定着して久しいですが、セクハラの定義が正しく認識されているかは疑問です。
先日も「自分は嫌ではないのでセクハラではないです」という言葉を女性社員から聞きました。自分が嫌でなければ周囲が不快でも問題ないとの姿勢です。しかし、周囲から不快で仕事に支障をきたすとの訴えがあればアウトです。
「職場におけるセクシャルハラスメント」には「対価型」と「環境型」があります。厚生労働省から詳しい定義が示されていますのでご紹介します。
対価型セクシャルハラスメントとは
労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応(拒否や抵抗)により、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的に見て不利益な配置転換などの不利益を受けること
環境型セクシャルハラスメントとは
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなどその労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること
環境型セクハラの定義の「就労環境が不快なもの」について、多くの人は性的な画像や印刷物の掲示などと思っているようですが、もっと広い意味です。
環境型セクハラの典型的な例
環境型セクハラの典型的な例を確認しておきましょう。
・事務所内において上司が労働者の腰、胸等に度々触ったため、当該労働者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること
引用元:厚生労働省|セクハラ指針
・同僚が取引先において労働者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該労働者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと
・労働者が抗議をしているにもかかわらず、事務所内にヌードポスターを掲示しているため、当該労働者が苦痛に感じて業務に専念できないこと
文章を読んだ人の大半は自分は大丈夫だと思うでしょう。しかし、次にご紹介する実際の判例と照らし合わせてみると、意外にも自分の行動がグレーかもと立ちとまるかもしれませんよ。
壁ドン判例は環境型セクハラについても言及している
平成30年に東京地裁のセクハラを認めた判例で、『女性と交際関係にないのに、壁ドンをしたり、女性の頭をなでたり抱きしめたりした行為について、「わいせつな意図は認められない」としつつ、「幼稚で非常識な感覚だ」』としたものがあります。
この裁判は女性が「不快」だと訴えましたが、判決では「同意如何にかかわらず、周囲に学生もいる状況で男女の教職員の間で、そのような悪ふざけに及ぶことは、教育・研究・就労の場としての風紀を乱し、教員としての品位を損なう幼稚な言動というべきである」となっています。
同意があり女性が不快でなくても、周囲が不快に感じれば環境型セクハラに該当するということです。
オフィス内などオープンスペースでの男女のじゃれ合いは真面目に働いている社員の意欲を低下させるものです。それは環境型セクハラに該当する行為なのです。
まとめ
セクハラで悩んでいる人もいれば、知らず知らずに周囲に対して環境型セクハラに該当する行為に及んでいる人もいます。環境型セクハラに我慢できずに退職する人もいますので注意しましょう。
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