退職前に健康保険の選択を!フリーランスになるなら任意継続と国民保険のとっちがお得?ほかの選択肢もありますよ!

ポイント 社会保険・給与計算

人事担当として退職手続きをする筆者ですが、退職する方から退職後の健康保険について聞かれることがよくあります。

退職後にフリーランスになるという方もいるので「保険料の安いにはどっち?」と聞かれることも。

退職後の健康保険の選択としては、任意継続か国民健康保険を選択する方が多いのですが、保険料は在職時の収入によるため、いちがいに、どっちが得とはいえません。

健康保険は業種別の健康保険組合に加入することもできますが、一番お得なのは家族の扶養に入る選択だと思います。

この記事では退職後の健康保険の選択肢や保険料の算定方法などについて詳しく解説します。

退職後の健康保険の選択

会社を退職すると会社で加入していた健康保険が使えなくなります。そうなると医療費が3割負担から10割負担になります。

いくら健康な人でも病気やケガで医者にかかることはあります。家族がいればなおさら、家族を無保険にすることはできません。

医療費を民間の医療保険の保険給付で補填するのは難しく現実的ではないので、たいていの人は健康保険に加入します。

退職後の健康保険には次のような選択肢があります。無保険期間をつくらないためにも、退職時にはどの保険に加入するか決めておくとよいでしょう。

(1) 今まで入っていた健康保険を任意継続する
(2) 市町村の国民健康保険に加入する
(3) 業種別の健康保険組合に加入する
(4) 家族の扶養に入る

それぞれの加入要件や保険料について詳しくみていきましょう。

健康保険を任意継続

会社員は退職後に今まで入っていた健康保険を任意継続することができます。

ただし、在職中は会社が半額負担していた保険料の全額を自分で負担しなければなりません。また、任意継続できる期間は最長で2年間です。

通常であれば保険料は在職中の倍になりますが、任意継続の健康保険料には上限が設けられています。そのため、すべての人の保険料が倍になるとはいえません。

例えば、「協会けんぽ」の場合ですと、保険料は「30万×保険料率」が上限です。退職時の標準報酬月額(保険料の算定に使う額)が100万の人でも、任意継続の保険料は30万をベースに計算されます。

保険料率は都道府県によりことなりますが、おおよそ3万前後が任意継続保険料の上限です。そのため、月収が多かった人は在職時より保険料が安くなる可能性があります。

また、在職時の標準報酬月額が30万以下であれば、実際の等級で計算されます。任意継続を選択する際に参考にしてください。

こちらから全国の道府県別の保険料率が確認できます。

任意継続するには要件がありますので確認しておきましょう。

【協会けんぽの任意継続の要件】
・資格喪失日の前日までに「継続して2ヶ月以上の被保険者期間」があること
・資格喪失日から「20日以内」に自宅住所地を管轄する「協会けんぽ」申請すること。

任意継続の手続きは退職した会社はしません。期限内に自分で手続きしなければなりませんので注意しましょう。

協会けんぽの任意継続は家族を扶養することができますが、大手企業が会社やグループごとに運営している「健康保険組合」は扶養を認めていいない組合があります。事前に確認しておきましょう。

また、任意継続では、在職中の保険証は会社に返却し、会社が資格喪失手続きを行った後に、任意継続の保険証が発行されます。

一時的に手元に保険証がなくなるので病院に通院している人は気を付けましょう。

市町村の国民健康保険

市町村の国民健康保険は市役所などで加入手続きをします。手続きの際に、会社の健康保険の資格を喪失した証明書を求められることがあります。

退職時に「健康保険資格喪失連絡票」の発行を会社に依頼しておくとスムーズにすすみますよ。

国民健康保険の保険料の計算方法は自治体ごとにちがいます。所得割と均等割を使っているところが多いようですがオープンになっていないので、加入手続前に試算額を窓口で聞くのが一番です。

筆者も退職する人に「国民健康保険料っていくら?」と聞かれることがありますが、正直答えられません。

誤った額をお伝えすることもできないので「市町村ごとに計算方法がちがうので窓口に確認してください。会社が問い合わせても個人情報で回答してもらえないんですよ」と答えています。

結構みなさん聞きにいかれますよ。市町村で提示された額をもって再度相談にいらっしゃる方もいます。それくらい、みなさん悩んでいらっしゃいますね。

国民健康保険は家族を扶養することができません。そのため確認する際は、自分の保険料だけでなく、扶養していた家族の保険料を合わせて確認しましょう。

家族の保険料合計で任意継続とどっちがお得か比べるようにしてください。

業種別の健康保険組合

あまり知られていませんが、フリーランスや個人事業主はその職種により「業種別の健康保険組合」に加入することができます。2022年4月の時点で全国に160の健康保険組合があります。

健康保険組合は医療給付だけでなく、傷病手当金や出産育児一時金などの給付もあります。

全国の健康保険組合協会はこちらから業種選択して検索できます

健康保険組合は「住民票の住所が同じで同一世帯で暮らしている家族」も加入することができます。保険料は加入者と家族でちがいますので確認しておきましょう。

保険料は組合ごとに定められており、金額にばらつきがあります。加入を検討している健康保険組合のサイトで確認できます。

ほとんどの組合では下の図のように加入員と家族の保険料がわかるようになっていますよ。

保険料
出典:京都府建設業職別連合国民健康保険組合|保険料

家族の扶養に入る

退職して家族が働いている場合は、その扶養に入るのもひとつです。家族の扶養に入れば保険料はかかりませんから一番お得です。

事業を開始してすぐは経営も不安定ですし、固定費は極力抑えた方が負担が少ないので選択肢として検討してみましょう。

とはいえ、扶養に入る要件は決まっています。例えば、協会けんぽでの扶養に入るには次の条件をクリアしなければなりません。

収入条件:年間収入130万円未満(給与所得等の収入がある場合は月額108,333円以下、雇用保険等の受給者の場合は日額3,611円以下)または60歳以上・障害者の場合は年間収入180万円未満

同居の場合は、収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
別居の場合は、収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満

同一世帯の条件:被保険者と同居している必要がない者、配偶者、子、孫および兄弟姉妹、父母、祖父母などの直系尊属以外の者は同一世帯であること

夫婦ともに収入がある場合は、扶養する人数にかかわらず、年間収入の多い方が被扶養者として認定されますので覚えておきましょう。

また、配偶者の扶養に入ればその期間は国民年金の支払いも不要です。

国民年金の3号の資格要件に性別は関係ありませんから、夫が妻の扶養に入れば3号として扱われ、妻が厚生年金保険料を納めるだけです。

まとめ

フリーランスになるときに健康保険について悩む方は多いのではないでしょうか。病気やケガは突然です。退職後に無保険期間が発生しないように事前準備をして手続きをすすめると安心ですよ。

フリーランスの健康保険の選択肢についてご説明しましたが、それぞれ加入要件や保険料の大小もあります。

開業当初と事業が軌道にのってからでは選択肢がかわってくることも考えられます。都度見直していくことも大切だと思いますよ。

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