労働保険をわかりやすく!手続きや保険料の金額の計算など基本を詳しく説明!!

りんご 社会保険・給与計算

事業をスタートして人を雇うと労働保険に加入します。正社員だけでなく、アルバイトを雇った場合でも届出を提出して適用事業所とならなければなりません。労働保険は国の強制保険ですがから、知らずに手続きがもれると法律違反になりますので注意が必要です。
この記事では、労働保険の概要と保険料の計算方法、納付について解説します。

労働保険とは

労働保険は「労災保険」 と「雇用保険」で成り立っています。保険給付は別個に行われますが、保険料の徴収等については、原則一体のものとして取り扱われます。

労働者(非正規雇用のパートタイマー、アルバイト含む)を1人でも雇用していれば、業種・規模に関係なく労働保険に加入しなければなりません。 加入すべき会社を「適用事業所」とよび、事業主は「労働保険の保険関係成立届」「雇用保険適用事業所設置届及び雇用保険被保険者資格取得届」を所轄の労働基準監督署又は公共職業安定所に提出し加入します。

労働保険とはこのような制度です
出典:厚生労働省|労働保険とはこのような制度です

労災保険

労災保険はすべての労働者が対象です。労働者の業務上や通勤途中の負傷・病気・死亡に対して、被災労働者や遺族に必要な保険給付が行われます。他にも労働者の社会復帰をはかる事業もあります。

(例)仕事中に骨折した → 病院代、働けない間の賃金の保証、松葉杖の費用などを保険給付

雇用保険

雇用保険はすべての労働者が対象ではなく、週20時間以上働く労働者を加入対象としています。加入すると労働者が失業した場合などに生活及び雇用の安定をはかり、再就職を促進するための給付が行われます。

(例)失業してしまった → 失業手当や再就職手当を支給する、教育訓練費用などの給付金を支給

適用事業の種類と違い

労働保険の適用事業所は次の①②の2種類があります。

①一元適用事業所:労災保険と雇用保険の保険料の申告や納付を一元的に取り扱う事業です。大半の会社はこれにあたります。

②二元適用事業所:事業の実態から労災保険と雇用保険を区別する必要がり申告や納付を個別に二元的に取り扱う事業です。建設業や農林水産業がこれにあたります。建設や立木の伐採など事業の期間が予定される事業を有期事業といい労災保険のかけ方がことなります。

②は少し特殊なのでイメージできない方もいるかもしれません。大きな工事現場は、色々な会社が協力して成り立っています。いわば会社のように。そのため、労働者が所属している会社ではなく、工事現場を一つの事業体とみなして保険を適用すると考えましょう。

労働保険の保険料率

労働保険は会社が従業員分もまとめて当年分の保険料を概算納付します。そして翌年の保険料が確定したところで確定申告します。確定申告時に一般拠出金も併せて支払います。

2022年は数年ぶりに保険料率が上がりました。それも4月と10月の2回あがっています。年度の途中で保険料率が変更されていますので、2023年の労働保険の申告の計算には注意しましょう。

令和4年度雇用保険料率のご案内
出典:厚生労働省|令和4年度雇用保険料率のご案内

労働保険料の計算方法

労働保険料は次のように計算します。

●概算保険料
(労災保険の対象者の賃金総額×労働保険率)+(雇用保険の対象者の賃金総額×労働保険率)

●確定保険料
(労災保険の対象者の賃金総額×労働保険率)+(雇用保険の対象者の賃金総額×労働保険率)+(一般拠出金)

確定保険料のみ一般拠出金が加算されます。一般拠出金とは石綿(アスベスト)健康被害救済を目的としたもので労災保険適用事業所のすべての事業主が負担するものです。

計算式のなかの用語も専門的です。実際に計算する時は①~④を参考にしてください。

①賃金総額とは

労働保険料を計算する基となる重要な数字です。税金やその他の社会保険料等を控除する前の支払総額で、以下のようなものが該当します。

基本賃金賞与残業手当宿直・日直手当
通勤手当(非課税含)定期券(現物給付)回数券(現物給付)扶養手当
技能手当地域手当住宅手当調整手当
奨励手当休業手当前払い退職金物価手当(家計補助)

②労災保険料について

対象 : すべての労働者
保険料率 : 労災保険料率は事業によって違う
保険料負担割合 : すべて事業主の負担

③雇用保険料について

対象 : 雇用保険加入者(原則週20時間以上働く労働者)
保険料率 : 一般事業では保険率1000分の13.5
保険料負担割合 : 事業主と従業員が負担

一般事業では保険率1000分の13.5のうち
事業主1000分の10 : 従業員1000分の3.5で負担
従業員負担分は毎月「雇用保険料」が給与引きされます

④一般拠出金について

対象 : すべての労働者
保険料率 : 一般拠出金率は事業に関係なく一律1000分の0.02
保険料負担割合 : すべて事業主の負担

労働保険料の納付方法と時期

労働保険料は延納することができます。延納とは分割納付のことで、概算保険料額が40万円(労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみの場合は20万円)以上であれば3回に分割して納付できます。

2022年の納付期間は次のとおりです。金融機関の休日などの影響は多少ありますが、毎年同じパターンです。納期限が休日の場合は翌日が納期限となります。

第1期 : 4/1~7/31分  納期限7月10日 (口座振替日9月6日)
第2期 : 8/1~11/30分 納期限11月14日(口座振替日11月14日)
第3期 : 12/1~3/31分 納期限2月14日 (口座振替日2月14日)

概算納付と確定申告の差額はどうするのか

労働保険料の概算納付額と確定申告額の差額は確定申告で差引額として申告します。不足額は第1期に加算して納付します。もし、概算納付が多ければ基本は次年度の概算保険料に充当します。還付を受ける場合は「労働保険料・一般拠出金還付請求書」を提出します。

まとめ

労働保険は労災保険と雇用保険からなっていますが、会社が負担する保険料率がちがうなど異なる点もあり注意が必要です。

2022年は年度途中で保険料率がかわるという、めずらしい年になっています。2023年の年度更新だけでなく日々の給与から天引きする雇用保険料に間違いがないか確認しておきましょう。

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